法学部なら取っておきたい!春学期の目玉授業「法曹の仕事を知る」とは?
早稲田大学法学部には、年々人気上昇中の注目授業があります。
1年生以上の全学生が受講でき、ロースクール生や他学部生の受講も多いその授業は、対面形式で行われたにも関わらず、今年は総勢250人近くが受講しました。
その名も「導入講義―法曹の仕事を知る―」。
春学期の間、全14回にわたって毎度異なるゲスト講師が登壇する、講演会形式の講義です。
講師として来校するのは現役の法曹、つまり弁護士・検察官・裁判官として法律の実務に関わっている人達。
全員早稲田のロースクール出身で、多様なジャンルで働くユニークな先輩たちなのです。
何を学ぶの?
この授業の目的は、名前通り法曹の仕事を理解すること。
弁護士や検察官などはよくドラマなどで取り上げられることもあるので、漠然としたイメージを抱いているのではないでしょうか。
しかし、実際に自分が思い描いていたのは業務のほんの一部だったということがこの授業を通して痛感させられます。
そしてより深く広い法曹の世界に惹き込まれていくのです。
多様な法曹の仕事に触れる
ここでは、2021年度の講義の中から、実際に筆者が驚いた法曹の仕事についていくつかご紹介しましょう。
離婚問題を得意とする女性の弁護士の例を挙げます。
依頼者の元夫と子供の面会交流に付き添った際、子供が「弁護士さんも一緒に遊ぼう」と言い出し、依頼者の元夫(平たく言うと敵)と「どーんじゃんけんぽん」で遊んだというエピソードでは講堂に笑いが。
弁護士の仕事は裁判に関わることだけではないのだと気付かされる講演でした。
「震災と弁護士」というテーマで話してくださった弁護士は、東日本大震災とそれに続く福島第一原子力発電所の事故について扱っていました。
避難による身体・精神・金銭面で多くの人が被った損害を東京電力がどう賠償するかという問題に挑戦したその弁護士は、裁判外紛争解決(ADR)によって、裁判を起こすよりも迅速な解決ができるように助力したといいます。
夫婦別姓を求める弁護団の弁護士や、新しい法律の制定に一役買った弁護士など、行政に働きかけている弁護士の何人かからもお話を聞くこともできました。
このように、専門分野を決め、それを極める弁護士は「スペシャリスト」と言われるのに対し、私たちの想像する弁護士は、市民の相談に乗る何でも屋であり、「ジェネラリスト」と呼ばれます。
いわゆるマチ弁と言われる、あらゆる依頼に対応する講師の弁護士は、「目の前で困っている人を助けたい」と、あえて範囲を絞らずに弁護士業務を行っていました。
法曹の活躍の場は、実務家としてだけではありません。
「インハウスロイヤー」と呼ばれる企業内弁護士が近年急激に増加していたり、法律家の立場から政府に提言をしたり、消費者庁などで公務員として働く弁護士も一定数いるのです。
この講義ではそういった活動を行っている魅力的な法曹からの話もたくさん聞くことができる、キャリア教育の側面も持っています。
早稲田ならではの親近感
このように、三者三様の講義はとても刺激的でしたが、全体を通して、「早稲田ジョーク」を飛ばしながら懐かしそうに語る講師の先輩方の姿が特に印象的でした。
堅いイメージのある裁判官の先生の、「早稲田生ってそういうところあるよね」「あのとき〇〇先生がこんなことを言って……」といった親しげな口調に思わず笑みがこぼれてしまいます。
学部生時代には成績が悪かったもののロースクールで一念発起して司法試験に挑戦した話や、サークル活動にいそしんだ話など卒業生ならではの親近感が持てる小ネタは、面白いだけでなく現役早稲田生の将来の指針や希望になりました。
印象に残ったのは、多くの講師が「学生時代は色々な活動をしておいた方がいい」と私たちへのメッセージを伝えたこと。
法曹は様々な経験を重ね、多くの人と関わることで初めて十分に仕事ができるようになるのだそうです。
司法試験の受験生は勉強ばかりしているというイメージを払拭する言葉でした。
なんと、授業後にスライドに自分の連絡先を示し、「検察官に興味がある人はここに連絡してくれたら質問に答えます」という大サービスをしてくださった検察官もいました。
さすが元早稲田生、後輩の面倒見が良いという特色がこんなところにも出ています!
ここまで、授業内で筆者の記憶に残ったエピソードを共有しましたが、ここで紹介した内容はほんの一部。
実は、講師の先生が「SNSで拡散しないでね」と言いながら職務の裏側をちらっと話してくださったりもするのです。
ここで魅力を紹介しつくすことができないのがもどかしいですが、有名人の絡む事件の担当経験や、組織の裏側はどうなっているのか、弁護士は検察官のことを正直どう思っているのか、などとちょっと気になる裏話を本音で話してくださったりもしました。
法曹の仕事を学ぼう!
法曹を目指す学生には推奨科目として設定されている本授業ですが、純粋な興味で受講しても十分楽しめるものになっています。
なお、成績評価は出席率と中間・期末の二度のレポートによります。
レポートは自分の興味を持った回を選択し、講演の内容に関連した事件や問題点を深掘りするものです。
提出したレポートは、テーマとして選択した回の講師へ送られ、採点されます。
つまり、現在法曹として働いている法律家にチェックされるという、これもまた珍しい機会となっているのです。
なお、2021年3月に成文堂より、本授業の内容をまとめた書籍『挑戦する法曹たち―法律家たちのキャリアマップ―』が出版されています。
しかし、各講義の内容、ゲスト講師は毎年少しずつ変わっていきます。
その日の授業はその日にしかないのです。
購入もおすすめですが、実際の授業の充実感には代えられません。
「導入講義―法曹の仕事を知る―」。早稲田、特に法学部に入学したら取ってみて損はないでしょう。
早稲田大学法学部在学中の1年生です。現在法曹コースにて法律を勉強中。
音楽、舞台(演劇・ミュージカル等)、映画、アニメーションの鑑賞が好きで、演劇用脚本の執筆経験もあります。
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